
LLM開発って機能要件ばかりが注目されがちですけど、非機能要件はどう考えればいいんですか?



いい質問ですね。非機能要件を軽視すると、プロジェクトは必ず後で苦しみますよ。今日はセキュリティ・スケーラビリティ・コスト管理について整理してみましょう
LLM開発における非機能要件の重要性
LLM開発というと、多くの人が「回答の精度」や「どんな機能を持たせるか」に意識を集中します。
ですが、実際にシステムを運用する現場では、機能よりも非機能要件でつまずくケースが多いのです。
例えば…
- セキュリティを甘くした結果、入力した顧客情報がログに残り問題に
- 利用者が急に増え、応答が遅くなりクレーム殺到
- APIの利用料が予想以上に膨らみ、数百万円規模のコストが発生
どれも「後から直せばいい」と思いがちですが、リリース後に修正するとシステム全体に影響が出ます。
そのため、要件定義の時点で非機能要件を意識することが欠かせないのです。


セキュリティ:入力と出力をどう守るか
LLM開発で最初に考えるべき非機能要件がセキュリティです。
「ちょっとした油断」が大きなトラブルにつながるため、初心者でも最低限は押さえておく必要があります。
よくある失敗例
- 入力ログにメールアドレスや電話番号がそのまま保存されてしまった
- 悪意あるユーザーに「パスワードを出力しろ」と仕込まれ、不正出力が起きた
- APIキーをフロントエンドに書き込んでしまい、すぐに流出した
よくある誤解
「テスト環境だから大丈夫」と思って、実データをそのまま投入してしまうケースがあります。
しかしテスト環境のログが外部に流出した事例は実際にあり、テストだからこそ対策が抜けがちです。
「本番もテストも同じレベルのセキュリティをかける」という意識を持つほうが安全です。
最低限意識すべきこと
- 個人情報はマスクや匿名化をしてから扱う
- 入力をそのまま信用せず、不正な指示を検知する仕組みを用意する
- APIキーなど秘密情報はフロントに置かない
専門的な技術は後から身につければよいですが、最初から「守る視点」を持つことが大切です。
スケーラビリティ:使う人が増えたときに備える
LLMは便利だからこそ、想定以上に利用者が増えることがあります。
リリース初日にアクセスが集中して落ちる、といった話はよくあります。
よくある失敗例
- 社内向けに小さく作ったつもりが、公開直後に全社員が殺到して応答が遅延
- サーバーを1台しか用意しておらず、障害で丸一日止まってしまった
よくある誤解
「うちのサービスは利用者が少ないから大丈夫」と考えるのも典型的な誤解です。
実際には、社内で便利だと口コミが広がり、翌週にはアクセス数が数倍になることも珍しくありません。
小さなサービスでも、想定以上に広がる可能性を前提に準備することが重要です。
最低限意識すべきこと
- 利用者数を少なめに見積もらない(多めに見積もる)
- 負荷テストを事前に行う(同時にどれだけ使えるかを確認する)
- 障害が起きても一部で済むように冗長化を考える
特に初心者は「少人数で使うから大丈夫」と思い込みがちです。むしろ利用が広がる前提で考えるのが安全です。
コスト管理:使いすぎをどう防ぐか
LLM開発は「使った分だけ課金される」ことが多く、思った以上に費用が膨らみやすいです。
実際、開発初期は無料枠や少額で収まっていても、本番運用に入ると一気に数十万円規模に跳ね上がるケースも珍しくありません。
よくある失敗例
- 高性能モデルを全リクエストで使った結果、月額数百万円に
- 過去の会話履歴を全部つなげて送信し、トークン数が肥大化
- キャッシュを作らず毎回APIを叩いてしまい、無駄に課金
よくある誤解
「高性能モデルを常に使えば安心」という発想は危険です。
確かに精度は上がりますが、その分コストも跳ね上がります。
実際には利用場面ごとにモデルを使い分ける方が現実的で、コストを抑えながら精度も担保できます。
最低限意識すべきこと
- 用途に応じてモデルを使い分ける(高精度が必要な場面だけ重いモデルを使う)
- 会話履歴は短く区切る(全部残さず、必要な部分だけ送る)
- よく使う回答はキャッシュして再利用する
「コストは自然に抑えられるだろう」と油断すると赤字直行です。最初から予算上限を決めておくと安心です。
LLMを導入する現場では、「どんな機能を実現するか」ばかりに意識が向きがちです。
しかし実際の運用では、機能以外の部分――つまり非機能要件でつまずくことが非常に多いのです。
まずは次の3つを押さえることが、安定したプロジェクト進行の第一歩になります。
- セキュリティ:入力や出力に機密情報が残っていないか
- スケーラビリティ:ユーザーが増えても応答が耐えられるか
- コスト管理:使いすぎて予算を超えないか
LLM開発に取り組み始めた方は、まずこの3つを要件定義の段階で意識することが大切です。
「非機能要件は後でいいや」と考えると、運用で必ず行き詰まります。
早い段階でチェックしておけば、LLM開発を安心して進められます。








