
少しお伺いしたいのですが…オフショア開発ってベトナムが多い印象なんですけど、他の国とどう違うんでしょうか?



良い質問ですね。たしかにベトナムはよく選ばれていますが、中国やフィリピン、インドなど、それぞれに特徴がありますよ。今回は国ごとの違いや、どういった案件に向いているかを一緒に整理してみましょうか。
ベトナム|コストパフォーマンスと日本対応力のバランスが魅力
メリット
- 人件費が比較的安く、コストパフォーマンスに優れる
- 日本企業との取引に慣れたエンジニアが多く、日本語対応のブリッジSEも育っている
- 親日的な国民性で、コミュニケーションが取りやすい



私が以前担当した業務システムの案件では、ブリッジSEの方が日本語で細かい仕様確認まで丁寧に対応してくださって、とても助かりました。日本側の開発メンバーと同じ目線で話せたので、仕様ズレが少なく、安心して任せられたのを覚えています。
デメリット
- 上級エンジニアは限られており、大規模案件では人材確保が課題になることも
- 品質やレビュー体制にばらつきがあるため、マネジメントが鍵



ただし、別のプロジェクトで、レビューが形だけになっていた時期がありまして…。指摘しても『これはOKです』と返されて、実は深掘りされていなかったということも。品質を安定させるには、レビューの仕組みを日本側がしっかり設計することが大事だと実感しました。
向いている案件
- 中小規模の業務システム・Webアプリ開発
- ブリッジSEと連携して進めるタイプの開発
中国|技術力は高いが“指示精度”が重要
メリット
- 技術レベルが高く、AIや大規模サービス開発にも対応可能
- 開発リソースが豊富で、大規模案件にも柔軟に対応できる
- 英語での対応力も一定あり、国際プロジェクトにも強い
デメリット
- 指示が曖昧だと自己判断で進めてしまう傾向がある
- セキュリティや情報管理に不安を感じる企業もある
向いている案件
- 高度な技術力を求める大規模開発(AI、Fintechなど)
- 英語ベースでのプロジェクト運営が可能な体制



あるAI系の開発で中国企業に依頼したとき、最新技術への対応が非常に早くて驚きました。技術的なキャッチアップ力が高く、PoCのスピード感も申し分なかったです。その反面、少し判断を任せると仕様と異なる方向に進む場面もあり、仕様の伝え方にはかなり気を遣いました。
フィリピン|英語対応+柔軟な人材が魅力
メリット
- 英語が公用語で、英語でのやり取りがスムーズ
- BPOやカスタマーサポート業務に強く、柔軟な対応が期待できる
- 明るくフレンドリーな国民性で、チームに馴染みやすい
デメリット
- 技術力にばらつきがあり、企業や個人による差が大きい
- 祝日や時差の影響でスケジュール調整が必要になる場合も
向いている案件
- 英語ベースの開発案件
- 軽量な改修・カスタマイズ案件、UI改善



以前、UIの調整や文言変更の案件をお願いしたことがあるのですが、対応がとても丁寧で、しかも依頼の意図を汲み取ってくれた提案までいただけたのが印象的でした。特に英語のやり取りにストレスがなかったのは大きな安心材料でしたね。
インド|技術先進国だがマネジメント力が鍵
メリット
- 数理・工学系分野に強く、AIや機械学習などの先端技術に対応可能
- 国際プロジェクトの経験豊富で、大規模体制も整っている
- 英語が通じるエンジニアが多い
デメリット
- 自律性が高く、指示が曖昧だと意図と異なる実装になることがある
- マネジメントが甘いと納期や品質に課題が出る可能性がある
向いている案件
- AI、ビッグデータ、R&Dを含む技術先行型開発
- 高度な英語でのマネジメントが可能な体制を持つ企業



インドのエンジニアに機械学習モデルの構築をお願いしたとき、アルゴリズムの選定理由や改善提案が非常に的確で、専門性の高さを感じました。ただし、細かい仕様を伝えずに任せると、独自の判断で進められてしまうので、管理側の設計力が問われるなと感じました。
オフショア開発の成功は、「価格」や「人材数」といった単純な指標だけで決まるものではありません。各国の特徴を理解し、自社の体制や案件特性に応じて適切な発注先を選ぶことが何より重要です。