
要件定義ってすごく難しいですね…。ChatGPTって、上流工程でも使えるんでしょうか



はい、使い方によってはとても有効ですよ。特に思考を整理したり、要件の矛盾を見つけたりする場面では、大きな助けになるんです。



なるほど、単なる文章作成だけじゃないんですね!



その通りです。壁打ち相手として活用すれば、要件定義の精度を高めることができます。今回は、その具体的な活用方法をご紹介しますね。
はじめに
システム開発の成功は、要件定義や上流工程の質にかかっています。
このフェーズでは、単なる「聞き取り」ではなく、ユーザーの潜在的なニーズを引き出し、矛盾なく要件を整理する高度なスキルが求められます。
しかし、短期間で多くの情報をまとめあげるには限界もあり、思考の幅や深掘り力に課題を感じる現場も多いのが実情です。
そこで注目したいのが、ChatGPTを「壁打ち相手」として活用する方法です。今回は、要件定義や上流工程においてChatGPTを「思考の補助輪」として使う新しいアプローチを紹介します。
ChatGPTは「壁打ちパートナー」として最適
- 仮説生成の補助
- 要件定義では、「まだ何も決まっていない」状態から仮説を立てることが重要です。ChatGPTに業務内容や顧客ニーズを伝えると、多角的な仮説やアイデアを提示してくれるため、発想の幅が広がります。ブレスト相手として活用することで、自分だけでは思いつかなかった切り口を得ることができます。


業務内容やユーザー像を具体的に伝えることで、より現実的な仮説が得られる。
- 抜け漏れや矛盾の検出
- 人間の思考だけでは、どうしても抜け漏れや要件間の矛盾が生まれがちです。ChatGPTに仕様案を提示し、「おかしな点はないか?」と問いかけることで、隠れた矛盾点や不整合を炙り出すことができます。初期段階で粗を発見することで、後工程での手戻りを減らせます。


リアルタイム在庫更新とバッチ処理の矛盾を指摘。
- ユーザー視点での問いかけ補助
- 開発者目線だけで要件をまとめてしまうと、エンドユーザーの立場に立った観点が欠落することがあります。ChatGPTに「ユーザー視点で懸念点は?」と尋ねると、利用者目線での疑問や要望を浮かび上がらせることができます。
要件定義を深めるためのChatGPT活用例
- ヒアリング前の想定質問リスト作成
- ヒアリング前に、ChatGPTを使って想定質問リストを作成するのは非常に効果的です。
顧客ヒアリングの前に、ChatGPTに「この業種、この規模の企業に聞くべき質問は?」と尋ねることで、網羅的な質問リストを短時間で作成できます。これにより、当日の聞き漏れを防ぎ、ヒアリングの質が大幅に向上します。
さらに、ChatGPTに対して 「業務要件」「機能要件」「非機能要件」「運用・保守要件」といったカテゴリ別に整理するよう依頼すれば、質問内容に偏りが出にくくなります。
また、業種や企業規模に応じて「業務フローの特徴」や「業界固有の慣習」についても事前に確認しておくことで、ヒアリング時により具体的な議論を深めることができます。
このように、ChatGPTを事前準備段階で活用することで、単なる質問リスト作成にとどまらず、ヒアリング設計そのものの精度を高めることが可能になります。
- ヒアリング前に、ChatGPTを使って想定質問リストを作成するのは非常に効果的です。
- ユースケースや業務フロー案のたたき台作成
- ユースケース図や業務フロー設計も、ゼロからすべてを考えるより、ChatGPTに「たたき台」を出してもらったほうが圧倒的にスピーディです。
ChatGPTに「想定する業務内容」「利用者像」「システムの目的」など最低限の条件を伝えるだけで、基本的なユースケースや業務の流れを提示させることができます。そこからブラッシュアップしていけば、単なる作業時間の短縮だけでなく、視点漏れの防止にもつながります。
特に、業務プロセス間の「暗黙的な前提条件」や「部門間連携ポイント」などは、人間の思考だけだと抜けやすいため、AIが網羅的に仮説を提示してくれることが大きな助けになります。
また、ChatGPTに「エラーケースや例外パターンも含めて出力して」と指示を追加することで、通常の成功パターンだけでなく、異常系フローや分岐条件の検討にも役立てることができます。
こうしたたたき台をベースに、人間が現場の実態やビジネス上の特殊事情を加味してブラッシュアップしていくことで、現実に即した実用的なユースケース・業務フロー設計が短期間で仕上がるようになります。
- ユースケース図や業務フロー設計も、ゼロからすべてを考えるより、ChatGPTに「たたき台」を出してもらったほうが圧倒的にスピーディです。


- 要求仕様間の矛盾チェック
- 異なる部門や複数担当者からの要求をまとめると、自然と矛盾や重複が発生します。ChatGPTに複数要件を渡して、「相互矛盾がないか?」を尋ねることで、人間の目では見逃しがちなミスも事前に炙り出せます。
実践ポイント|使い方次第で効果は倍増する
ChatGPTはあくまで「使い方次第」でパフォーマンスが大きく変わります。単純なチャットツールとしてではなく、思考のパートナーとして活用することが重要です。
具体的にプロンプトを設計する
ChatGPTに対して曖昧な質問を投げかけると、当然ながら出力内容も漠然としたものになり、実務で使えるレベルの情報は得られにくくなります。
そのため、プロンプト設計の段階で具体的な前提条件をしっかりと設定することが非常に重要です。
たとえば、
- 業種(例:物流、医療、製造など)
- ターゲットユーザー(例:倉庫管理者、営業担当者、医療事務員など)
- システム規模や利用人数(例:中小企業向け、拠点数5拠点程度)
といった情報を明確に伝えることで、ChatGPTはより対象に即した仮説や提案を生成することができます。
また、単に「物流業界」と指定するだけでなく、「BtoB中心の物流業務であり、荷主企業とのシステム連携を重視する」など、文脈や業務特性まで具体化することで、さらに出力の質を高めることが可能です。
このように、質問設計の段階でどれだけ情報を絞り込み、具体的な前提条件を与えられるかが、ChatGPTを開発現場で有効に使うための最大のポイントになります。


プロンプトの具体性が成果物の質を大きく左右することを示している。
答えを鵜呑みにせず必ず「人間が批判的検討」する
ChatGPTは非常に強力な支援ツールではありますが、あくまで生成モデルであり、万能ではありません。
特に、要件定義や上流工程といった開発プロジェクトの重要な局面においては、AIの出力をそのまま鵜呑みにして採用するのは極めて危険です。
理由として、ChatGPTは与えられた情報に基づいて推論や仮説生成を行いますが、その内容が常に正確であるとは限りません。
誤った前提に基づく提案や、業務プロセス特有の事情を無視した一般論を含む場合もあり、これを見抜くのはあくまで人間の役割です。
そのため、ChatGPTの出力内容については、一度必ず人間側で精査し、
- 業務要件や業務実態と齟齬がないか
- 想定されるリスクや抜け漏れがないか
- 論理的な整合性が取れているか といった観点から慎重に検討する必要があります。
この「精査・検討」というステップを挟むことで、AIによる支援を受けつつも、最終的なアウトプットの品質を担保し、プロジェクト全体のリスクを最小化することが可能になります。
要するに、ChatGPTは思考の加速装置ではあっても、最終的な品質保証の責任を代替できるものではありません。
人間とAIの適切な役割分担を意識することが、上流工程におけるAI活用成功の鍵となります。
議論を深めるために意図的に「反論させる」プロンプトも活用する
ChatGPTをより効果的に活用する方法のひとつに、「あえて否定的な視点を持たせる」というテクニックがあります。
たとえば、作成した仕様案や要件定義書に対して、「この仕様案を否定的に評価してください」あるいは「潜在的なリスクや問題点を厳しく指摘してください」と依頼することで、通常の思考プロセスでは見落としがちな観点を引き出すことが可能になります。
開発プロジェクトでは、自ら作成した成果物に対して肯定的なバイアスがかかりやすくなりがちです。
仕様を前提として進めている関係者は、無意識のうちに「この設計は正しいはずだ」という前提で物事を見てしまい、潜在的な矛盾や実装リスクに気づきにくくなります。
そこで、ChatGPTにあえて批判的な立場を取らせることで、第三者視点での反論や問題提起を受けることができ、
- 想定していなかった業務上のリスク
- 利用者視点での不便さや課題
- 要件間の論理的な不整合 などを、事前に洗い出すことが可能になります。
特に、要件定義フェーズでは、仕様の「良い面」だけでなく、「悪い面」「破綻する可能性」まで想定しておくことが、プロジェクト全体の品質と成功率に直結します。
この否定的視点の導入により、仕様の堅牢性や現実適合性を高めるだけでなく、後工程での手戻りコストを大幅に抑える効果も期待できます。
つまり、ChatGPTは単なるアイデア出しのツールではなく、「リスク検討支援ツール」としても非常に有効に使えるのです。
要件定義・上流工程では、膨大な情報を整理し、矛盾なくまとめあげる知的労働が求められます。ChatGPTはその思考を支える優れた補助ツールです。
しかし、最終判断を下すのはあくまで人間自身。
AIに頼り切るのではなく、「思考の補助輪」として上手に使いこなすことが、これからの上流工程には求められています。ChatGPTを味方につけ、開発プロジェクトの成功率を高めましょう。