システム開発顧問とは?中小企業の失敗を防ぐ外部パートナー活用法

発注先からまた追加見積りが来ました…。もう予算が足りません

それ、よくある失敗ですね。システム開発顧問を入れて、要件や見積りを第三者レビューしてもらうだけで防げるケースが多いんですよ

システム開発は中小企業にとって大きな投資です。しかし外注先に任せきりにすると「予算超過」「納期遅延」「期待外れのシステム」といった失敗に直面しやすいのも事実。この記事では、そうしたリスクを防ぐシステム開発顧問(外部PM/外部CIO/技術顧問)の役割と、実務での導入手順を再現可能な粒度で解説します。

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背景と課題

中小企業がシステム開発でつまずきやすいのは、次のような課題が積み重なるためです。それぞれの課題と具体的な影響を解説します。

  • IT部門が不在
    経営会議で「リプレイスを進めよう」と決まっても、要件整理を任されるのは本業と兼務する担当者です。意思決定者と現場キーパーソンの時間が十分に確保されず、文書化まで落ちない状態で前提が変わるたびにプロジェクトが遅延します。結果として1〜2か月の遅れは珍しくありません。
  • 要件整理不足のまま見積りへ進む
    RFPがない、またはExcelに2〜3枚の要件メモだけでベンダー比較に進むケースが多いです。その結果、各社が安全側に前提を置くため、受注後に差分が顕在化し、追加見積りが初期費用の15〜30%発生することもあります。SaaS連携や権限設計の抜け漏れは、テスト直前に設計へ戻る要因になりやすいです。
  • 非機能要件・運用要件の軽視
    可用性(稼働率99.9%か99.5%か)、バックアップの世代数、監査対応、セキュリティなど“見えない品質”が曖昧なまま契約されがちです。納品直前になって「監査部門からNG」「夜間バッチ失敗で朝業務が止まる」といった事態に直結します。追加対応は高額になりがちです。
  • 意思決定リードタイムの長さ
    課長→部長→役員→社長と多層承認を経るため、レビュー後の決裁まで平均48〜72時間かかります。スプリント(2週間)内で差し戻しが間に合わず、設計の“借金”が積み上がってしまいます。繁忙期には現場が会議に出られず、仕様解釈が開発側主導になり、“暗黙知”が抜け落ちます。
  • 現場業務の例外処理やシステム連携の齟齬
    Excelでの例外処理が要件に入らず、リリース後に二重運用が続くケースがあります。また会計や在庫とのインタフェース設計が甘いと、受入れ時に桁ズレやマッピング不備が発覚し、修正コストが初期費用の20%前後に膨らむこともあります。
  • 契約条件の曖昧さ
    準委任と請負の違い、変更要求(CR)の扱い、検収条件(DoD)が不明確なまま契約されると、責任範囲が不明確で工数ばかり膨張します。結果として「要件は可変・納期は固定・コストも固定」と三方詰めになり、品質が犠牲になりがちです。
  • プロジェクト運営の統治不足
    議事録に「決定事項・保留事項・ToDo・責任者・期日」が残らない、課題管理ツールを導入していないと、課題総数が3スプリントで1.5倍に増え、全体像が見えなくなります。現場は火消しに追われ、経営は「開発が遅い」と感じて関係性が悪化します。
  • 経営的損失の顕在化
    開発費超過だけでなく、販売開始の遅れによる機会損失、残業増による人件費や離職リスク、顧客体験劣化によるブランド毀損など、P/Lにはすぐ反映されないが中期的に確実に効いてくる影響が積み重なります。

これらの課題を放置すると、後戻りコストが急増します。企画〜要件定義の最初の2〜6週間に、発注者側に寄り添う第三者(顧問)が入り、仕様の解像度、非機能要件、契約・変更管理、意思決定リズムを整えることで、総コストの10〜25%削減が期待できます。

よくある失敗パターン

  • システム完成直前に監査部門からNGが出る
    • なぜ起こるか
      • 誰がどの操作をしていいか、データをどのくらい保存するかなどが、最初からきちんと決まっていない。
    • 結果どうなるか
      • システムが完成しても「これでは使えない」と言われ、数週間のやり直しや追加費用が発生する。
  • 外部システム連携がテスト段階で失敗する
    • なぜ起こるか
      • データの書き方や送るタイミング、処理のルールがはっきり決まっていなかった。
    • 結果どうなるか
      • テストの段階でデータが壊れる、送れない、ずれるといった問題が次々に出て、納期が延びる。
  • リリース後に現場が結局Excelに戻ってしまう
    • なぜ起こるか
      • 例外的な処理がシステムに入っていない、操作がわかりにくい、移行の準備や教育が足りなかった。
    • 結果どうなるか
      • システムを入れても実際には使われず、二重入力や間違いが増えてしまう。。
  • 契約条件の曖昧さから追加費用の交渉が泥沼化する
    • なぜ起こるか
      • 「どこまでが契約に含まれるのか」「変更が出たときにどう対応するか」が決まっていない。
    • 結果どうなるか
      • 「これは含まれるはず」「いや追加費用です」と食い違い、交渉に時間がかかり、納期や関係性に悪影響が出る。

解決策・実践ノウハウ

システム開発を成功させるには、まず発注側が主体的に取り組むべき基本があります。そのうえで、不足しやすい部分を外部の知見で補うことが有効です。

  • 要望の整理と文書化
    企業自身がまず行うべきことは、関係者から要望をすべて出し、矛盾や重複をなくしたうえで文書にまとめることです。
    この工程を丁寧に行えば、後から「聞いていない」「含まれていない」といった食い違いを大幅に減らせます。
  • 見えにくい条件の明確化
    利用人数、データ保存の年数、休日の対応など、完成後に影響する条件を早い段階で決めておきます。
    この部分を曖昧にすると、システムが完成してから「想定外」が頻発します。
  • 契約内容と変更時のルールづくり
    契約時に「どこまでが基本料金に含まれるか」「途中で仕様を変えたいときはどう処理するか」を決めておくことが重要です。
    これを曖昧にすると、追加費用の交渉が長引き、納期や関係性に悪影響を与えます。
  • 意思決定の流れを短く保つ工夫
    承認に何段階もかかると開発スピードが落ちます。
    どの範囲まで担当者が判断できるかを整理しておくだけで、進行のスムーズさが大きく変わります。
  • 課題や決定事項を記録に残す習慣
    会議で出た「やること」「担当者」「期限」を整理して共有する習慣を徹底します。
    記録を残さないと、言った言わないのトラブルや、課題の放置につながります。

これらをきちんと行えば、システム開発の失敗リスクは大幅に下げられます。ただし、これをすべて自力で進めるのは負担が大きい場合もあります。その際には、外部の専門家に部分的にサポートを依頼するという選択肢もあります。

まとめ

システム開発の失敗は、特別なケースだけで起きるものではありません。要望を整理しないまま進めてしまったり、見えにくい条件を曖昧にしたまま契約を結んでしまったりするだけで、完成後に大きな手戻りや追加費用が発生します。さらに承認の流れが複雑だったり、決定事項を記録に残さなかったりすることで、現場と経営層の認識がずれてしまい、信頼関係にひびが入ることも少なくありません。

こうした問題を避けるには、発注側が主体的に「要望の整理」「条件の明確化」「契約ルールづくり」「意思決定の短縮」「記録の徹底」を実行することが不可欠です。これらをきちんと進めるだけで、システム開発のリスクは大幅に減らせます。

ただし、これをすべて自社だけで行うのは簡単ではありません。リソース不足や経験不足で迷うこともあるでしょう。そうしたときには、外部の専門家に相談するという選択肢もあります。必要な部分だけ助けを借りることで、開発をスムーズに進めることができます。

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