非エンジニアとの要件定義が劇的に変わる！ChatGPTでスムーズな合意形成を実現する方法

はじめに

システム開発における「要件定義」は、プロジェクト成功の鍵となる工程です。しかし、非エンジニア（営業、企画、マーケティングなど）との会話では、専門用語の壁やイメージの違いにより、認識のズレが生じがちです。その結果、後工程で手戻りが発生し、スケジュールやコストに悪影響を及ぼします。

ChatGPTを活用すれば、こうしたコミュニケーションのギャップを埋めることが可能です。初心者でもすぐに使える具体的な活用ステップを紹介していきます。

ChatGPTを使った要件定義の進め方：実践ステップ

ステップ	活用シーン	ChatGPTへの指示例	期待される成果
ステップ1	ヒアリング準備	「要件定義で使える質問をリストアップして」	質問集を自動生成
ステップ2	会話記録の要約	「会話を要件にまとめて」	要点が整理された要件文
ステップ3	図解補助	「文章を図解用に展開して」	図作成の素材生成
ステップ4	レビュー	「不明瞭な表現を指摘して」	要件の明確化と品質向上

ステップ1：ヒアリングの準備

まずはヒアリングで「何を聞くか」を明確にするために、ChatGPTに質問案を作ってもらいましょう。以下のようにプロンプトを入力します。

Webアプリの要件定義に必要な質問項目を、非エンジニアでも答えやすいように簡潔に書き出してください。

ChatGPTは以下のような質問例を出力してくれます。

• どのような業務に困っていますか？
• このアプリを使う人はどんな役職の方ですか？
• どんな機能があれば便利ですか？
• すでに使っているツールはありますか？

これらをそのままコピーして「ヒアリングシート（Google Docsなど）」を作成しましょう。
また、ChatGPTに「議事録テンプレートを作って」と依頼すると、以下のようなフォーマットも作ってくれます。

[議題] 業務効率化アプリについてのヒアリング
[日付・参加者] 2025年4月 / ○○部 ○○氏
[ヒアリング内容要約]
1.現状の課題：
2.期待する効果：
3.想定ユーザー：
4.必要な機能：

これにより、ヒアリングに自信のない初心者でもスムーズな進行が可能になります。

ステップ2：会話の記録と要約

ヒアリング中に取ったメモや録音内容をChatGPTに渡し、次のようにプロンプトを作成します。

以下の会話ログを要約して、機能要件（ユーザーが利用する機能）と非機能要件（セキュリティ、パフォーマンスなど）に分けて整理してください。
（ログを貼り付け）

ChatGPTは、会話から「どんな機能が必要か」「どんな性能が求められるか」を抽出して以下のような出力を返してきます。

[機能要件]
ー 顧客情報を検索・登録できる
ー 日報を管理できる

[非機能要件]
ー モバイル端末からもアクセス可能
ー 操作は3クリック以内に完了

このように構造化することで、要件定義書のドラフト作成がぐっと簡単になります。

ステップ3：図解やフロー図の生成

テキストだけでは理解しにくい部分は、視覚的に伝える工夫が必要です。 ChatGPTに以下のように指示しましょう。

この業務の流れを図解にするための要素を文章で整理してください。Draw.ioやLucidchartに展開しやすい形にしてください。
（業務内容の説明を入力）

すると以下のような出力が得られます。
ユーザーがログイン → 顧客検索 → 顧客情報の閲覧・更新 → 日報入力 → 保存

これをもとに、Lucidchartなどのツールでブロック図やフローチャートを作成すれば、非エンジニアにも直感的に伝わる成果物になります。

ステップ4：反復的なレビューと改善

作成した要件書や図解をレビューする際にも、ChatGPTは非常に頼りになります。レビューは客観性が求められる工程であり、曖昧な表現や抜け漏れを防ぐには、第三者の視点が不可欠です。ChatGPTを仮想レビュアーとして活用することで、何度でも精度の高いフィードバックを得られます。

以下のようなプロンプトを入力することで、レビューを依頼できます。

この要件書をレビューしてください。曖昧な表現や非現実的な要件が含まれていれば、それを指摘し、どう改善すべきかアドバイスしてください。
（要件書を貼り付け）

ChatGPTはたとえば次のように出力します。

• 「ユーザーフレンドリーなUI」は主観的です。「3クリック以内で目的のページにたどり着ける設計」といった客観的な条件にしましょう。
• 「大量データに対応」とはどの程度か不明です。「1日あたり最大10万件の処理に耐える設計」など、具体的な数値に置き換えましょう。
• 「安全性の高い認証方式を使用」は曖昧です。「OAuth2.0を採用し、二要素認証を実装」と明記しましょう。

また、ChatGPTに「要件書の論理矛盾がないかを確認して」と追加で依頼すれば、内容の整合性までチェック可能です。このように繰り返しレビューを行うことで、品質の高い要件書を短期間で仕上げることができます。

活用事例：営業部門との業務アプリ要件定義

ある開発チームでは、営業部門から「業務日報の記録・確認を効率化したい」という要望を受け、業務アプリの構築に着手しました。従来の方法では、要件定義の段階だけで2週間以上かかっていたため、今回はChatGPTを積極的に取り入れて効率化を図りました。
具体的なプロセスはこちらです。

ステップ1：課題抽出

• プロンプト例：「営業職がよく抱える業務課題とは？」
• ChatGPT出力：「訪問記録の手間」「報告フォーマットのバラつき」「日報の未提出」
  • これらの出力は、現場でよく耳にする“あるある”をChatGPTが整理して提示したものです。特に「日報の未提出」は、営業職における管理業務の大きな悩みの一つであり、システム設計の観点でも見逃せないヒントになります。
• 活用：出力された課題を元に、ヒアリングで確認すべき観点を具体的な質問に変換します。
  • 例：「どのタイミングで日報を書いていますか？」 → 日報記入の習慣と業務フローを把握
  • 例：「どの端末で操作していますか？」 → モバイル対応やUI設計の基礎情報
  • 例：「記入ミスはどのように発生していますか？」 → エラーチェックや入力補助のニーズ抽出

このように、ChatGPTの出力を“そのまま使う”のではなく、“質問に変換して再利用する”ことで、より実用的なヒアリングが可能になります。

ステップ2：ヒアリング実施と記録

• ツール：Google Meet + Notta（音声自動書き起こし）
• 結果：会話ログをテキスト化して保存
  • Nottaのような自動文字起こしツールを使うことで、リアルタイムのヒアリング内容を漏れなく記録できます。特に初回ヒアリングでは、聞き取りや確認に集中するためにも、記録を自動化しておくことが重要です。後からログを確認できることで、ChatGPTに正確な文脈を提供でき、要件の抽出精度が大きく向上します。

ステップ3：課題と要件の構造化

• プロンプト例：「この会話ログをもとに、課題・改善ポイント・必要な機能に分類してください」
• ChatGPT出力：
  • 現状の課題：スマホ入力の操作性が悪い、提出漏れが多い
  • 改善ポイント：簡単なUI、入力チェック機能の追加
  • 必要な機能：テンプレート入力、保存リマインド、過去データの検索

このプロンプトは、会話ログの中から意味のある情報を自動的に分類・抽出する非常に実用的な使い方です。実際の会話は断片的で、要件が明確に言語化されていないケースも多いため、ChatGPTに分類作業を任せることで初期整理が一気に進みます。

ここで得られる「課題・改善ポイント・必要な機能」は、要件定義書の章立てに直結します。

• 「現状の課題」は現場の痛点整理として活用
• 「改善ポイント」は機能設計の方向性を示す材料
• 「必要な機能」はシステム要件にそのまま落とし込める内容

つまり、この出力は単なるメモではなく、設計初期フェーズの「たたき台資料」として極めて有効です。また、これを非エンジニア側と共有すれば「この理解で合っていますか？」という確認もしやすく、誤解の予防にもつながります。

ステップ4：業務フローの図解化支援

• プロンプト例：「この業務フローを図解するための構成要素を列挙してください」
• ChatGPT出力：「ログイン」「テンプレート選択」「入力」「確認」「送信」「管理者確認」
  • ChatGPTは、入力された業務説明からプロセスを分解し、実際の作業ステップとして抽出してくれます。このような構成要素が明確になることで、業務の流れが客観的に把握でき、抜け漏れや非効率な部分を特定することが可能になります。
• 活用：LucidchartやDraw.ioなどのツールを使えば、これらの構成要素を視覚的に整理したフローチャートを数分で作成できます。
  図を用いた説明は、非エンジニアとの共通認識形成において非常に有効であり、会議やレビューの場でも意思疎通をスムーズにします。

ステップ5：成果物の提示と合意

• 提示内容：要件サマリー、業務フロー図、改善提案
• ここで重要なのは、「誰にでも理解できる形式」で提示した点です。ChatGPTで整理・可視化した資料を使うことで、営業部門のメンバーが即座に内容を理解しやすくなりました。要件書の専門的なフォーマットではなく、「業務の流れ」「改善イメージ」「求める結果」の3点をセットで見せることで、判断のスピードが飛躍的に向上しました。
• 結果：即日合意。従来2週間の要件定義が3営業日で完了。
  • これは単なる効率化ではなく、関係者の納得感を担保しながらの合意形成が可能になったという点で非常に大きな成果です。
• 評価：営業部より「無駄な確認が減り、理解しやすかった」と高評価
  • ChatGPTを活用した可視化と説明内容の明確化により、「分かりやすさ」が信頼を生み、結果的に部門間の信頼関係構築にも寄与しました。