ユーザー要望って、聞き出すのが一番難しくないですか？自分でも何が欲しいか分かってない人も多くて……
それはよくある話ですね。でも最近はChatGPTを使って、ヒアリングの準備や要望の整理がずいぶん楽になってきましたよ。ちょっとした工夫で本音を引き出せるんです。
はじめに
システム開発において、ユーザーからの要望を正確に引き出すことは成功の鍵を握る重要な工程です。しかし、ユーザー自身が自分の本当の課題を言語化できていないケースは少なくありません。そこで役立つのがChatGPTのようなAIツールです。本記事では、ヒアリング設計やユーザー要望の整理にChatGPTを活用する具体的な方法をご紹介します。
ChatGPTで実現する3つのヒアリング支援
質問設計から要望整理までの流れを視覚的に理解できます。
1. ヒアリングの質問設計支援
ヒアリング前には、ChatGPTに対して「業種」「業務内容」「対象ユーザーの役職やスキルレベル」「現時点での課題仮説」「ヒアリングの目的（例：業務改善案の収集）」など、できるだけ詳細な前提情報を与えることで、より実践的で有効な質問集を生成できます。また、質問の形式（オープンクエスチョン／クローズドクエスチョン）や、事前に触れておきたい前提知識の有無なども指定することで、ヒアリング設計の精度が格段に上がります。
ChatGPTによる出力例：
1.現在の在庫管理はどのようなシステム・方法で運用されていますか？
2.過去3か月間で在庫の過不足による出荷ミスはどれくらい発生していますか？
3.出荷ミスが発生した場合、その後の対応手順はどうなっていますか？
4.在庫数の把握はリアルタイムで行えていますか？それともタイムラグがありますか？
5.誤った在庫情報が発生する主な原因は何だと考えていますか？
6.ピッキング作業の中で在庫管理における困りごとはありますか？
7.仕入れや発注のタイミングはどのように決定されていますか？
8.各拠点の在庫情報はどの程度統一されていますか？
9.社内で在庫数に関して異なる認識が生じた経験はありますか？
10.出荷ミスを防止するために現在行っている工夫や改善策があれば教えてください。
2. ヒアリング結果の要約と分類
実際のヒアリングメモや録音書き起こしテキストをChatGPTに入力することで、内容を要点ごとに整理するだけでなく、”操作に関する要望” “画面UIに関する改善提案” “業務プロセスの簡素化” “外部システム連携の希望” など、ニーズの種類別に分類してくれます。
さらに、ユーザー発言に対する曖昧な表現（例：「なんとなく使いにくい」）について、背景となる具体的な課題を推測させるプロンプトを活用することで、ユーザー本人も気づいていない本質的なニーズを浮かび上がらせることができます。
これにより、ヒアリング後の要望整理や提案資料作成のスピードと精度が格段に向上します。
ChatGPTによる出力例：
UI/UXに関する要望
・画面が見にくい → レイアウトや配色の改善が必要
・ボタンの配置が分かりにくい → 操作導線の再設計が必要
操作性に関する要望
・毎回ボタンを探すのが面倒 → よく使う機能のショートカット配置
認証・ログインに関する要望
・毎回ログインが必要 → シングルサインオンまたはセッション維持機能の導入希望
3. ユーザー心理の裏読み
ChatGPTに対して「ユーザーが言っていないけれど気になる可能性がある懸念点」や「表現の裏にある課題点を推定してください」といった指示を与えることで、発言の背景にある心理的・業務的要因を洗い出すヒントを得ることができます。
たとえば、”使いにくい”という表現の背後にあるのは、操作の複雑さではなくマニュアル不足や教育体制の欠如かもしれません。ChatGPTは、こうした曖昧な表現を複数の観点から解釈することで、ユーザー自身が言語化できていない潜在ニーズや未認識の課題を浮かび上がらせるサポートをしてくれます。
また、特定の役職（例：現場担当者、部門責任者など）ごとに異なる視点の潜在的な懸念事項を想定させることで、より網羅的なニーズ把握が可能になります。
ChatGPTによる出力例：
潜在的な課題
・過去に比べて操作フローが複雑化している可能性。
・ユーザーが以前の操作に慣れていたため、新UIへの移行がストレスになっている。
潜在的な懸念点
・新しい仕様に対するトレーニングやガイドが不十分。
・現場で非公式な回避手順や旧バージョン利用が横行している可能性。
・意図しない作業ミスや時間のロスが発生している可能性。
| 機能カテゴリ | 目的 | 推奨プロンプト例 |
|---|---|---|
| 質問設計 | 業務に適した質問を事前に洗い出す | 「〇〇業における△△業務のヒアリング質問を10個作成してください」 |
| 結果の要約と分類 | ユーザー発言を整理し、分類する | 「以下の発言を要望カテゴリ別に整理してください」 |
| 潜在ニーズの抽出 | ユーザーの発言に隠れた課題を見つける | 「この発言から考えられる潜在的な課題や懸念点を挙げてください」 |
活用上の注意点
- 情報の機密性に配慮すること
- 顧客名や実データを入力する際は、必ず加工や匿名化を行いましょう。たとえば、企業名は「A社」「B社」などに置き換え、ユーザー名やメールアドレス、IPアドレスなどの個人情報は伏字（例：●●様、xxx@example.com）にする必要があります。また、具体的な数値（売上、在庫数など）や地理情報も、重要度に応じて範囲でぼかす（例：「年間売上約○億円」）などの工夫が求められます。可能であれば、ChatGPTに入力する前に社内で定めたフォーマットやテンプレートに沿って前処理を行い、安全にAI活用を進めることが望ましいです。
- 最終判断は人間が行うこと
- ChatGPTはあくまで補助ツールであり、出力結果をそのまま鵜呑みにするのではなく、最終的な判断は人間が担うべきです。特にヒアリングでは、相手の言葉の裏にある感情や業務背景、場の空気感といった非言語情報が重要になります。例えば、相手の表情や声のトーンから「本音ではない」可能性を感じ取ったり、沈黙の間にある意図を読み取るといった、人間の経験や観察力による解釈が不可欠です。また、ChatGPTの出力内容に対して「なぜそう推定したのか」を考えることで、仮説検証の精度も上がります。AIの補助結果を自分なりに咀嚼し、判断の軸を持つことが、プロフェッショナルなヒアリングには求められます。
