
初めてPMを担当することになり、不安です…。どうやって進めればいいのでしょうか?



大丈夫ですよ。まずは“ゴールとプロセスの見える化”を意識しましょう。そのうえで、意思決定のフレームワークとコミュニケーション習慣を身に付けると安心です
CANVASとは?
「CANVAS」とは、プロジェクトマネジメントにおいて思考を整理し、計画的に行動するためのフレームワークです。もともとコーチング手法である「GROWモデル(Goal/Reality/Options/Will)」をベースにしており、これをプロジェクト設計に応用したのがCANVASの考え方です。
このフレームワークが優れているのは、抽象的な思考を段階的に具体化できる点にあります。目標設定から現状把握、選択肢の整理、そして具体的なアクションプランの設計まで、一貫した流れで考えを深めていくことで、ブレない判断と行動が可能になります。
特にPM初心者にとっては、日々のタスクに追われる中で「今、何を優先すべきか」が見えにくくなりがちですが、CANVASを使えば思考が可視化され、判断の軸が明確になります。その結果、チームとのコミュニケーションや意思決定にも自信が持てるようになります。
この記事では「プロジェクト設計図」としてのCANVASを使い、初めてのPMが具体的に何を考え、どのように行動すればよいかをステップごとに解説していきます。
あなたが初めてPM(プロジェクトマネージャー)として任命されたとき、その気持ちはきっと「嬉しいけれど、不安」だったのではないでしょうか。
チームの中心となって進行をリードする立場。進捗管理、スケジュール調整、関係者との調整……。やるべきことは多く、どこから手を付ければいいのか迷ってしまうこともあると思います。
そんなときに役立つのが、シンプルで実践的な「思考の型」と「行動パターン」です。本記事では、PM初心者が最初の一歩を踏み出しやすいよう、CANVASというフレームワークを活用して、プロジェクトを成功に導くステップを丁寧にご紹介します。
Step1:Goal(目標)— 成功のゴールを定める
最初にするべきは、プロジェクトの「成功」とは何かを明確に定義することです。PM初心者の多くは、手元のタスクを処理することに注力しがちですが、プロジェクト全体の方向性が見えていないと、チーム全体も迷子になります。
明日から実践できるステップとして、以下の手順をおすすめします:
- 紙またはGoogleドキュメントを開く
- タイトルに「このプロジェクトの成功とは何か?」と書く
- 以下の問いに答える形で具体的に書き出してみましょう
- このプロジェクトは何のために存在するのか?(例:業務効率化、新サービス導入)
- いつまでに完了する必要があるか?(例:2024年9月30日)
- 何をもって成功とするか?(例:社内の80%以上の部門で新ツールが利用開始されている)
- どの品質レベルで成果物が求められているか?(例:操作マニュアル付き、トラブルなく運用できる安定性)
例えば、「9月末までに新しい社内ツールをリリースし、主要部門で100%利用できる状態にする。業務時間が平均10%削減されることを目指す。」といったように、期限・対象・目的・効果をセットで明記するのがポイントです。
このようにゴールを明文化してチームと共有すれば、タスクの優先順位が明確になり、意思決定のブレも少なくなります。
Step2:Reality(現状)— チームと自分を客観視する
PMはプロジェクトの現在地を正確に把握することが重要です。自己判断だけで進めると、誤った方向に進んでしまう危険があります。そこで、以下のように具体的に現状を整理するステップをおすすめします。
明日からできる実践ステップ
- チームメンバー一覧を作成する(Googleスプレッドシートなど)
- 名前、担当分野、経験年数、スキル(例:React、AWS、デザイン)を記載
- 稼働状況(例:週3稼働、他案件あり)も記入
- 自分自身の棚卸しを行う
- A4用紙を用意し、左に「得意」、右に「苦手」を書いて箇条書きにする
- 例:得意=全体スケジュール設計、苦手=細かい仕様確認
- プロジェクトの制約を洗い出す
- スケジュール:いつまでに何を出す必要があるか?
- リソース:足りない人材、外注の必要性はあるか?
- コミュニケーション:決裁者は誰か、情報共有はどう行うか?
- 「現状把握シート」として一枚にまとめ、チームに共有する
- SlackやWikiに掲載して、意見を募る
こうして情報を可視化することで、自分たちの立ち位置が明確になります。プロジェクトは「わかっているつもり」で進めるより、「見える化」された情報で進める方が成功確率が大きく高まります。
Step3:Options(選択肢)— 解決策を洗い出す
現状を把握したら、次は「どのように改善・推進していくか」を考えます。ここでは、実際に使える手段をリストアップしていきましょう。
明日からできる実践ステップ
- ホワイトボードまたはMiroなどのツールで思いつく手段をブレインストーミング
- 以下のカテゴリに分けて記載する
- 情報共有(例:毎朝の朝会を実施)
- 進捗管理(例:週次のバーンダウンチャートを導入)
- 課題管理(例:Trelloで課題を一覧化)
- コミュニケーション(例:週1の1on1ミーティング)
- 各選択肢に「実行難易度(低・中・高)」と「効果の見込み(低・中・高)」を付ける
- 効果が高く、難易度が低いものから優先的に採用する
例)朝会はGoogleカレンダーに定期予定を追加、Trelloはテンプレートボードを用意、1on1ミーティングは週次でスケジュール設定
カテゴリ | 施策例 | 実行難易度 | 効果の見込み |
---|---|---|---|
情報共有 | 毎朝の朝会を実施する | 低 | 高 |
進捗管理 | 週次のバーンダウンチャートを導入 | 中 | 高 |
課題管理 | Trelloで課題を一覧化 | 低 | 中 |
コミュニケーション | 週1の1on1ミーティングを設定する | 中 | 高 |


「選択肢を出して終わり」ではなく、実行可能性と影響度の軸で評価するのが成功のカギです。
Step4:Will(行動)— 実行と習慣化で信頼されるPMに
選んだ施策を「やる」と決めたら、それを日々の行動に落とし込むことが必要です。
明日からできる実践ステップ
- Googleカレンダーでルーティンを設定
- 毎朝9:30〜9:45:朝会(全員参加)
- 毎週月曜:ロードマップ・タスク確認(30分)
- 毎月第1金曜:関係者レビュー会議(60分)
- 週1回:1on1ミーティングをスケジュール
- Wikiに「PMルーティン」としてまとめる
- 曜日ごとのルーチン、チェック項目、準備物などを記載
- タスク実行後は「振り返り」を簡単に書き残す
- 例:「今週の朝会は進捗がバラついていた。来週から前日に各自更新をルール化」
※これらのルーチンはStep3で挙がった選択肢からの具体的な導入例です。
こうした小さな習慣を積み重ねることで、PMとしての信頼が蓄積され、結果的にチームの成果にもつながります。
PMの仕事は、単なるマネジメント作業ではなく「チームが目指す方向へ、安全に導く」ことです。
CANVASというシンプルな枠組みを活用すれば、初めてのPMでも迷いにくく、次に何をすればいいかが見えてきます。
まずは、できることから一つずつ。小さな成功体験を積み重ねて、信頼されるPMを目指していきましょう。