経営者が知っておくべきシステム発注の基本|失敗しないベンダー選びのポイント

うちの会社で新しいシステムを導入することになったんですけど、ベンダー選びって正直どうやって決めればいいんですか?

そうですね、難しいですね。経営者の方がよく悩む部分です。価格や有名さだけで決めると失敗するケースが多いんですよ

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経営者が気づきにくいシステム発注の落とし穴

中小企業や成長期の企業にとって、業務システムの導入や刷新は避けられません。
しかし、経営者が直接システムを発注すると、意図せず落とし穴に踏み込んでしまうことがあります。

特に次のような背景から、失敗リスクが高まります。

システム発注における成功と失敗の分岐を示す案内板。左の道には落とし穴があり、経営者が気づきにくいリスクを象徴している
システム発注で直面する「成功」と「失敗」の分かれ道。

営業担当の提案内容をそのまま信じやすい

システム発注の場面で最初に接点を持つのは営業担当です。
経営者は事業課題を伝え、営業担当はその解決策を提案してくれます。

しかし、そこで提示される内容が必ずしも実現可能とは限りません。営業担当の立場からすれば受注が最優先であり、実際よりも短納期や低コストを強調する傾向があります。

結果として、契約後に開発現場が対応できず遅延が発生し、経営者は「言ったことと違う」と不信感を抱いてしまいます。
こうした齟齬を防ぐためには、提案段階から必ず実際の開発担当者を同席させ、実現可能性を確認することが欠かせません。

IT知識よりも価格や知名度で判断してしまう

経営者がベンダーを選ぶ際、わかりやすい指標として「費用」や「知名度」を基準にしがちです。

しかしITの世界では、必ずしも安いものや有名な企業が最適とは限りません。例えば安価な提案を採用したものの、必要な機能が含まれていなかったため、後から追加開発を行い結果的にコストが倍増するケースもあります。

こうなると当初の予算計画は崩れ、投資回収の遅れにつながります。価格やブランドに依存するのではなく、自社の業務に合うかどうかを基準に判断し、複数社の提案を比較する姿勢が重要です。

契約内容の細部まで目が届かない

契約書には数十ページにわたる専門的な条項が並びます。
経営者は全体の経営判断を担うため、こうした細部にまで目を通す時間や専門知識を持ち合わせていないことも多いでしょう。
その結果、契約書に「運用マニュアルの提供」や「ユーザー教育」といった項目が含まれておらず、後から別料金を請求されることがあります。

こうした不足は稼働後にトラブルを招き、想定外の出費を継続的に生む原因となります。契約段階では必ずIT顧問や専門家にレビューを依頼し、納品物や責任範囲を明文化しておくことが不可欠です。

運用・保守のコストを軽視しがち

多くの経営者はシステムの「初期開発費用」に目を向けますが、実際には稼働後の運用・保守にかかる費用こそが大きな負担となります。提案書では開発費用が強調され、ランニングコストについては後回しにされることが少なくありません。

クラウドサービスを採用したものの、利用ユーザーが増えた結果、月額費用が当初の3倍に膨らんだ例もあります。
このような事態が続けば、せっかくのシステム投資が経営の足かせになってしまいます。

開発費用と同時に、少なくとも5年間の総コストを試算し、将来的な負担を見積もることが求められます。

明日から実践できる!システム発注を成功させる4つのコツ

システム発注の落とし穴を避けるには、特別な専門知識よりも「確認の仕方」と「答えの読み解き方」を知っていることが重要です。以下では4つの観点から、質問の仕方と判断の目安を紹介します。

システム発注で失敗を避けるための4つの実践的な視点をまとめたチェックリスト型図解

1.ベンダーの実績を確かめる

打ち合わせで「御社と似た条件の企業で導入した例はありますか」と聞いてみましょう。

  • 「同業界・同規模の事例があります。詳細は○○社です」
    • → 具体的に事例を挙げられるベンダーは信頼性が高い。
  • 「守秘義務で詳細は出せません」
    • → 即NGではないが、概要すら説明できない場合は経験不足の可能性がある。
  • 「実績はありませんが挑戦します」
    • → コスト面で有利になる可能性はあるが、リスクを取れるかは経営判断が必要。

2.担当者と直接話してみる

営業担当だけではなく、実際の開発担当者を同席させ「このスケジュールで本当に実現可能ですか」と尋ねてみます。

  • 「この機能は別フェーズに分けた方が現実的です」
    • → 無理をせず調整案を出せる担当者は信頼できる。
  • 「大丈夫です」と即答するが根拠がない
    • → リスクが高い。慎重に判断する必要あり。
  • 「通常は○ヶ月ですが、人員追加で短縮できます」
    • → 補足条件を提示できる場合は交渉の余地がある。

3.見積と契約内容を具体的に確認する

見積書を受け取ったときは「この金額はどの作業に何時間かかる想定ですか」と尋ねてください。

  • 内訳が具体的に出てくる
    • → 透明性があり比較可能
  • 「トータルで○円です」としか答えない
    • → 不透明で追加費用リスクが高い

将来のコストと外部の目を取り入れる

ベンダーに「初期費用だけでなく、5年間で総額いくらかかるか」を算出してもらいましょう。

  • 「初期500万円+月額15万円」
    • → 5年で約1,400万円と計算でき、投資回収の見通しを立てやすい
  • 「費用は状況次第」
    • → 将来予算が読めず危険。上限額を契約に明記すべき

さらに、契約前に外部のIT顧問や専門家にレビューを依頼すれば、見落としを防げます。顧問を雇うのが難しくても、知人や業界団体の相談窓口を活用するだけで効果的です。

まとめ

システム発注は単なるIT投資ではなく、経営判断そのものです。気づきにくい落とし穴を避けられなければ、数百万から数千万円規模の損失を招くこともあります。

今回紹介した4つのコツを実践すれば、経営者自身がシステム発注の判断をコントロールできるようになります。そして、自分一人で判断するのではなく、外部のIT顧問や専門家を巻き込むことが、失敗を回避するもっとも現実的な方法です。

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システム発注の検討を進める際には、専門家レビューとあわせて外部の学習コンテンツに軽く触れておくと、発注判断のヒントが得られる場合があります。
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